業務改革のキモ:誰も教えてくれなかった目標設定の秘訣!

今日は目標の立て方について、お話しします。
目次
ある残業時間削減プロジェクトでの話
かって、ある製造業の経営支援に携わったことがありました。
この会社は、長らく経営不振が続き、メーカーの生命線で
ある「ものづくり」の力が弱っていました。
この状況を打開するために、外部から人材を招集することに
なりました。
この方は、世界的に有名な日本の一流メーカーで品質保証の
仕事に携わっており、日本や海外の工場長を歴任されたとい
う輝かしい実績をお持ちでした。
副社長として招き、製品の品質向上の指揮をとってもらいま
した。
さすがに、長年製造の現場で活躍された方だけあり、著しい
品質改善を成し遂げられました。
この副社長が、ある日本社オフィスを歩いていて、「どう
も仕事のやり方に無駄があるのではないか」と漠然とした
印象を持たれました。
「製造現場では一円のコストダウンのために汗水流して取
り組んでいるのだから、全社的に残業削減をすべきだ」と
いう号令の下、残業時間を「昨年度から30%削減する」
プロジェクトが始まりました。
確かに、これまで「前任者から引き継いだこと」だとして
漫然としていた業務もあったし、このプロジェクトを機に
仕事のやり方を抜本的に見直したりして、各部門で無駄を
取り除いていくことができました。
しかし、ここで問題が発生します。
研究開発部門から、「昨年に取り組んでいた仕事と今年の
仕事は内容が異なっている。昨年は人員も不足していて大
変忙しかったが、今年は補充もできた。昨年と今年を比較
するのは条件が違いすぎているので、おかしいのではない
か」という指摘がありました。
指摘の主旨は理解できるものの、非定型な業務が多い部門
では条件を前年と今年の条件を同じにすることはできない
ので、昨年度の残業時間をもとにして達成度を評価するこ
とで決着しました。
目標の立て方のこつ
この事例から次のことが言えます。
改革を進めるにあたって、リーダーであるあなたは「我々は
この取り組みでどこまで到達すべきか」という目標を設定し
なければなりません。
しかし、この目標の設定の際に、どういう基準や計算方法で
達成状況を評価するのかを正確に定義しておかないと、活動
の途中で目標の妥当性自体について疑問が持たれてしまいます。
例えば、単に残業時間の削減と言っても、
- 人員の増減はどう考慮するのか
- 非定型な業務が多い部門はどう取り扱うのか
- 「サービス残業」があった場合はどう考慮するのか
などを事前に決めておく必要があります。
「残業時間30%削減」というのは、社員の意識を共通化す
るためのスローガンとしてはいいのですが、それだけで走
り出してはいけないということです。
どのような目標がよいかを判断する尺度として「SMART」
というのがあります。つまり、目標というのは、
Specific(具体的である)
Measurable(測定可能である)
Achievable(達成可能である)
Related(経営目標に関連している)
Time-bound(いつまでに達成するか時間制約がある)
の五つの要素が必要で、この五つの頭文字をとってSMART
と呼んでいます。
それに加えて、目的はシンプルであることも大切です。
アメリカの航空宇宙局 (NSA)は、1958年には次のような
目標を掲げていました。
- 大気圏と宇宙の現象に関する人類の知識の拡大
- 航空宇宙ビークルの有効性、性能、速度、安全性、
効率の向上 - 機材、装備品、消耗品、生命体を宇宙に輸送できる
ビークルの開発と運用 - 航空宇宙ビークルの平和・科学目的利用から得られ
る潜在的メリット、そのような利用の機会と問題点
に関する長期的研究 - 航空宇宙科学技術および大気圏外での平和的活動へ
の応用におけるリーダーとしての合衆国の役割の確立 - 軍事的な価値、または意味を持つ発見の国防関係政
府機関による利用、これらの政府機関から、非軍事
的航空宇宙活動の管理運営のために設立された民間
機関への航空宇宙情報の提供 - 本法律に従ってなされる活動およびその結果の平和
的利用における合衆国と諸外国との協力 - 活動、施設および設備の不要な重複を避けるために
合衆国のすべての関係機関の緊密な連携による科学
・工学資源の最大限効果的な活用
あまりに多くてなんだか良く判らないですよね。
そんな声が内部であったのか、ジョン・F・ケネディ大統
領は、三年後の1961年に宇宙開発に関する目標を次のよう
に修正しました。
「私たちは、この国が1960年代のうち
に人間を月に着陸させ、地球に無事帰
還させるという目標の達成に取り組む
べきであると信じる」
シンプルでわかりやすいですよね。
それでは、目標の設定にあたってどのような問いかけが
必要でしょうか。
参考になる問いかけ例を紹介します。
- 目標が達成された時、あなたは何を得ていますか
- その目標を達成することはあなたの人生にとって
どれくらい重要なことでしょうか - 目標が達成できなかったとしたらどうしますか
- それが本当にしたいことですか、いつまでに実現
したいですか - 現在の課題は何ですか。なぜ問題ですか
- 目標の達成に向けてこれまで取組んだこと、現在
取組んでいることはなんですか - 目標が達成された状態を100点とすると現状の点
数は何点ですか - そのまま放置しておくと、どのようになると思い
ますか、等
最後に
いかがでしたか。
業務改革における目標設定については、念には念を入れ
て行う必要があるのが理解できたと思います。