話し相手との信頼関係の構築が、成功の鍵です。

以前、マネジャーに必要な七つのコミュニケーションスキルについてブログを書きました。

今回はその七つのスキルのうち一つ目の「信頼関係を築く」について説明します。

 

江戸無血開城

東京から川崎を経て横浜に至る道路に国道15号があります。別名「第一京浜」とも呼ばれる国道です。

この第一京浜の沿線で近世日本史における転換点となる西郷隆盛と勝海舟の会談が行われました。

旧幕府側から勝海舟が、新政府側からは西郷隆盛が出席しました。

鳥羽・伏見の戦いで敗れた幕府軍は、江戸に逃げ帰ってきて、新政府軍がまさに江戸城の総攻撃を準備していた時に薩摩蔵屋敷にて行われました。

二回に渡る会談で勝は、徳川家が降伏する条件を西郷に提示したため江戸総攻撃が中止になりました。

本当に息の抜けない緊迫感のある会談だっただろうと想像されます。

特に旧幕府側の人間にとってみれば、提示した条件が本当に守られるのか、という思いもあったことでしょう。

しかし、会談の幕府側の責任者である勝は、西郷を信頼できる相手と信じ、降伏という決断をしたのでした。

このようにコミュニケーションが成功するかの第一の鍵は、相手を本当に信頼できるかという点に尽きます。

 

信頼の架け橋を架ける

心理学には、NLPと呼ばれる手法があります。

これは、Neuro Linguistic Programing(神経言語プログラミング)の略称で、1970年初頭、カリフォルニア大学の心理学部の生徒であり数学者であったリチャード・バンドラーと言語学者のジョン・グリンダーによって開発された人間心理とコミュニケーションに関する学問です。

このNLPでは、相手と信頼関係が築かれている状態をラポールと呼びます。

 

ラポール

ラポール(rapport)とは、フランス語が語源で、ラポール(rapport)はフランス語が語源の言葉で、「調和した関係」「無意識レベルで心が通い合う状態」という意味を持っています。

しかしながら、相手と初めて会った時に、「私はあなたを信用していますから、あなたも私を信用して下さい」と言っても、相手は信用してくれるわけではありません。

コミュニケーションにおいて信頼関係を作り出すためには、言語・非言語を使ったちょっとしたコツがあります。

具体的には、次の三つになります。

  • ミラーリング
  • ペーシング
  • バックトラッキング

 

ミラーリング

誰かと話をする時を想像してみて下さい。

相手が微動だにせずあなたのことをずっと見つめて話をするというのは、非常に稀なことです。

話の途中で腕組みをしたり、出されたお茶に口を付けたり、ちょっと体を捻ったりと、相手は無意識でも何かしらの動作をするものです。

この相手の動作、姿勢、表情などを「鏡に写った」ように真似ることで、相手のあなたに対する警戒心を取り除くことができます。

これを「ミラーリング」と呼びます。

ミラーリングは、相手と同じように振る舞うことですが、それはただ単に真似をすることではなく、相手が今何を考え、どんな気持ちでいるのかを理解することです。

相手の外側の表情を真似ることで、内側の感情が理解できるようになり、相手の状態に対応した反応を示すことができます。

これは、相手から見れば、「あなたに好意をもっています」というメッセージが無意識のうちに送られることになり、その結果として相手の警戒心が解けるのです。

ある実験で、初対面の二人にしばらく話をしてもらい、あとで双方の印象について尋ねました。

被験者のうち一人は、話をするときに相手の仕草や動作を真似るように事前に指示されていました。

実験の結果は、真似された人は自分が真似されていることに気づかなかったばかりか、真似ていた人をより好意的に評価したということです。

 

それでは、具体的にミラーリングはどのようにすればいいのでしょうか。

まずは、相手と視線を合わせることです。それから、相手の動作や姿勢、表情などの大まかな動きに
合わせることです。

ただし、このミラーリングには気をつけて欲しい注意点があります。

それは、「さりげなくやること」です。

あまりやり過ぎると、相手に自分が真似されているということを感じ取られ、不信感を抱かれてしまい、逆効果になってしまいます。

 

ペーシング

ミラーリングは真似ることですが、会話のテンポや声のトーン、声の大小、呼吸などを合わせることでも、相手からの親近感を得ることができます。

これは「ペーシング」と呼ばれる手法です。

ペーシングとは、「合わせること」あるいは「同調」という意味です。

ある調査によれば、話の聞き手は、自分とほぼ同じようなテンポで話す人を、より有能だと判断する傾向にあることが示されています。

例えば、あなたが「ここだけの話ですが」と声を潜めて話した時に、相手が大声で「何ですか」と言われると、「この人は場の空気が読めない人だな」と思ってしまいますよね。

常に相手の会話を観察し、相手がゆっくりと話をするならこちらもゆっくりと、相手が声を潜めたならこちらも小さな声で、会話をすることがポイントです。

 

バックトラッキング

他にも、会話の中で、相手が発した言葉と同じ言葉を繰り返すことで、相手との距離を近づけることができます。

いわゆる「鸚鵡返し」というものですが、これは「バックトラッキング」と呼ばれる手法です。

例えば、相手が「昨日は夜遅くまで残業をしていたのです」と言った時、「ああ、そうですか」と答えるのではなく、「夜遅くまで残業ですか」といった具合に返答することです。

そうすることで、相手は自分の話を否定せずに肯定的にきちんと聞いてもらえたと言う印象を持ちます。

相手の会話のうち、バックトラッキングをするのは、「相手の感情」「話の内容の事実」「話の要約」です。

それぞれのポイントは、

  • 相手の「感情」に対して、声のトーンを合わせながら反復する。
  • 相手の話した「事実」を反復する。しかし、相手の話した言葉通りに言い換えない。
  • 時々、話を要約して、相手の話した内容を正しく理科視しているかを確認する。
    相手は自分が言いたいことがきちんと伝わっていることが判り、安心感が向上します。

 

最後に

いかがでしたか。ちょっとした意識付けで相手との関係も良好なものになります。

明日から使ってみてはいかがですか。

yujiro akimoto
  • yujiro akimoto
  • 【経歴】
    兵庫県神戸市出身。

    大学卒業後は、日系の精密機器メーカーに入社。約9年間に渡り人事、海外販売 (東南アジア地域)、営業支援などの業務を経験。

    その後、コンサルティング業界に転職。
    戦略コンサルタントとして、通信業・製造業・専門サービス業などのクライアントに対する戦略立案や戦略の実行支援などに携わる。

    コールセンター会社の経営企画と人事の担当役員として事業会社の経営に携わった後に、株式会社秋元アソシエイツを設立し、組織の生産性向上などのコンサルティングサービスを提供する。

    【資格】

    Marshall Goldsmith Stakeholder Centered Coaching (Certificated Coach)
    全米NLP協会 プラクティショナー
    TOEICスコア: 915

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