我田引水に陥らないコツ。それはメタ思考を身につけることです

メタ思考やメタ認知という言葉を聞いたことがありますか?コンサルティングをしていると、よくこの言葉を耳にします。

このブログでは、メタ思考とはどのようなものか、そしてメタ思考を使うと何がいいのかについて解説します。

 

プロジェクトの概要を把握したところ…

先日、あるコンサル会社から「クライアントからプロジェクトの引き合いがあるが人がいないので、手伝って欲もらえないか」という依頼があり、クライアントとのミーティングに参加した時の話です。

その会社は、業界トップクラスの会社で、名前を聞けば知らない人はいない位です。

面談には、情報システム部門の部長が二名出席されました。

その会社はいくつもの子会社を抱えているのですが、そのうちのひとつを分社化させることが決まっており、その時期が9ヶ月後に迫っています。

現在までは、本社が提供する人事・給与システムを使っていたのですが、分社化するともう使えなくなります。

このため、分社化後の社内システムのあり方の抜本的な見直しが必要になりました。

しかし、具体的なことはまだ何も決まっていないので、その構想策定をリードしてもらないかというのが依頼でした。

これまでの経験では、9ヶ月という期間は社内システムを構築して稼働させるのは、いささか短く、これまで社内で検討がされないまま時間が過ぎていたということが窺えました。

その点を指摘しても時計の針を逆さまに戻すこともできないので、如何ともしようがないので、敢えて触れないことにしました。

先方の説明を聞いて、こちらからは

  • 分社化までの期間が迫っているので、システム開発ありきではなく、アウトソーシングも検討に入れるべき
  • 分社化した時にどのような業務を内部で担っているのか(つまり何を外部に依存するのか)だけでなく、自分たちが考える「あるべき姿」について認識を合わせてから、そこから逆算して、いつまでに何をするのかを決めるべき
  •  自分自身は人事の業務については知見はあるが、人事システムの導入の経験はない

という話をしました。

詳細なことを聞こうとしても、

「まだ何も決まっていない」

「それも決めなければならない」

ということで、検討のかなり初期段階にあるという印象を持って、会議を終えました。

何日かして、クライアントの結論が出たと言う連絡を受けました。

結論は、私への発注は見送るというもので、その理由が人事システムの構築の経験がないことが懸念材料だったということです。

しかし、そもそも分社化の時点で人事システムを導入するかどうかも決まっていないのに、判断が人事システム導入ありきというのは少し怪訝な感じがしました。

いずれにしても、9ヶ月でシステム導入を行うのは相当難易度の高い取り組みになるだろうと思いました。

よく考えてみると、情報システム部門からの依頼なので初めから人事システム導入というのは既定路線で、ある意味「我田引水」的なプロジェクトであり、その背景が理解できていなかった自分の読みの浅さを実感した次第です。

メタ思考の大切さ

ちなみに、我田引水とは、自分の田んぼにだけ水を引き入れる行為から、他人のことを考えず、自分に都合がいいように言ったり行動したりすることや自分に好都合なように取りはからうことを指す言葉です。

情報システム部門の立場に立ってみれば、自分たちが年度初めに立てた「分社化した会社に人事給与システムを構築する」という計画を棚ざらしにしていて、その結果「やっぱりシステム化よりもアウトソーシングにします」というのは、いかに状況から見て最善の策であっても自分自身や部門の業績にマイナスになるので、その判断はできないでしょう。

しかし、当事者である子会社に取ってみれば、何が何でもシステム化に固執する理由は見当たらないし、その判断は自分たちがどのような会社にしていきたいかという経営トップの思いに基づいて行われるべきです。

コンサルティングという仕事をしていると、相手の立場に立って目の前の課題を考えることがいかに重要かという場面に直面します。

このように、様々な物事を自分の立ち位置からではなく、一つ上の視点から考えることで、新たな気づきを得たり、自分が持っている思い込みや思考の癖から脱却し、創造的なアイデアを得る考え方を「メタ思考」と呼びます。

「メタ」はギリシア語の「meta」を由来とする言葉で、「越える」「高次の」といった意味を持つ接頭語です。

一つ上からの視点で見るというのは、よく心霊現象で自分の体から意識が抜け出して、上から周りを見るという幽体離脱と言えばわかりやすいでしょうか。

こう言ってみると簡単そうに見えますが、メタの視点を持って考えるというのは以外と難しいものです。

このメタ思考の考え方を実践しているのが、航空機のキャビンアテンダントが挙げられます。

例えば、飛行機の中で赤ん坊が突然泣き出すことに苦情をいう人を最近新聞雑誌等でよく目にします。

この状況で赤ん坊の親に「静かにして下さい」と言っても問題は何も解決しません。

全日空でVIP担当をしていたキャビンアテンダントによるとこの状況を解決するためには、

  • 赤ん坊の親御さんには、「気圧でお耳が痛いのかもしれませんね」と相手にこちらもその状況をよく理解していていつでも手助けできるというメッセージを送る。
  • 苦情を言っている人のところには、「ご迷惑をおかけしております」ではなく「様子を窺って、何かできることがないか確認してきます」

というのが、その場を丸く収めるコツだそうです。

最後に

本日の記事はいかがでしたか。

全日空のVIP担当者は、その著書の中でこのように言っています。

  • 普通の人は、正論を言って相手を動かす。
  • 上手い人は、それとなく伝え、動かす。
  • 超一流の人は、伝えずに動かし、しかもこちらを好きになってもらう。

この極意を学びたい者です。

参考文献

メタ思考トレーニング 発想力が飛躍的にアップする34問 (PHPビジネス新書)

ANAのVIP担当者に代々伝わる言いにくいことを言わずに相手を動かす魔法の言葉

 

yujiro akimoto
  • yujiro akimoto
  • 【経歴】
    兵庫県神戸市出身。

    大学卒業後は、日系の精密機器メーカーに入社。約9年間に渡り人事、海外販売 (東南アジア地域)、営業支援などの業務を経験。

    その後、コンサルティング業界に転職。
    戦略コンサルタントとして、通信業・製造業・専門サービス業などのクライアントに対する戦略立案や戦略の実行支援などに携わる。

    コールセンター会社の経営企画と人事の担当役員として事業会社の経営に携わった後に、株式会社秋元アソシエイツを設立し、組織の生産性向上などのコンサルティングサービスを提供する。

    【資格】

    Marshall Goldsmith Stakeholder Centered Coaching (Certificated Coach)
    全米NLP協会 プラクティショナー
    TOEICスコア: 915

コメントを残してください。