【書評】「リエンジニアリング革命」
- 書籍名:「リエンジニアリング革命」
- 著者:マイケル・ハマー氏、ジェームス・A・チャンピー
この書籍は、マサチューセッツ工科大学のコンピュータサイエンスの教授であったマイケル・ハマー氏と経営コンサルタントであるジェームス・A・チャンピー氏によって1993年に出版されました。
日本では、一橋大学大学院国際企業戦略研究科教授の野中郁次郎氏が翻訳をしています。
この著作によって、ハマーしとチャンピー氏は、ビジネス・プロセス・リエンジニアリングという手法を確立し、日本でもBPRブームが起きたという時代を代表するビジネス書です。
目次
リエンジニアリングとは
本書の中で、リエンジニアリングは次のように定義されています。
「リエンジニアリングとは、コスト、品質、サービス、スピードのような重要で現代的なパフォーマンス基準を劇的に改善するために、ビジネス・プロセスを根本的に考え直し、抜本的にデザインしなおすこと」
この定義の中で使われている「根本的」というのは、前提条件や制約条件のないことを意味し、「抜本的」というのは、既存の構造と手続きに囚われることなく新しい手法を生み出すことを意味します。
なぜ、リエンジニアリング的な発想が必要になったかというと、アダム・スミスが提唱した分業の原則は、産業界の発展に大いに貢献してきました。
一例を挙げると、
- 1820年代の鉄道会社における官僚的な組織運営
- 1900年代初めの自動車業界でフォード社が移動式の組み立てラインの導入による作業の単純化
- 1900年代初めのGM社による車種別部門制の導入
などがあります。
しかし、この分業という考え方が、市場環境がグローバル化、変化のスピードアップなどの変化の中で、効力を発揮するどころか逆に足枷になってきました。
つまり、分業を支えてきた調整機能が、企業運営にとってコスト負担になっており(間接コスト、管理コストの増加)、その閉塞状態から抜け出すために根本的で抜本的な見直しが必要になったと言う訳です。
リエンジニアリング手法のポイント
リエンジニアリングを進めるための基本的なコンセプトは、「根本的で抜本的な見直し」ですが、具体的にどのように進めればいいのでしょうか。
本書では、リエンジニアリングを進めるポイントとして、分業化と集権化をいかにバランスさせるかにあります。
より詳細には、次の6つになります。
- 統合化:複数の仕事を一つにまとめる
- 権限委譲:従業員が意思決定する
- 業務の同時化・非直線化
- 複線化によるイレギュラー対応力の向上
- 業務の移管:最適な場所での遂行
- 無駄の排除:チェック、管理、管理の最小化
このような変革を進めることで、組織はフラットなプロセス型の構造になると言っています。
また、BPRというと日本では情報システムを導入することと理解されていることが多いのですが、あくまでもリエンジニアリング実現のための重要な構成要素の一つと考えられています。
リエンジニアリング手法のもとになっている考え方は、「不連続思考」です。
不連続思考とは、現在当然のように進められているルールや手順をある意味捨て去る「断絶」することを意味します。
「そもそもなぜこれをやっているのか」「どうしたらより安く、速くできるだろうか」という問いかけが必要となります。
最後に
いかがでしたか。
ビジネスの世界だけでなく、世の中にははやりすたりという
ものがあります。
しかし、本書にある根本的な考え方はいつの時代でも通用す
るものと言えます。
温故知新ではないですが、たまにこういった古典を読み返す
のもいいものです。