できる部下だけが知っている上司の操縦法11のポイント

最近はテレビや雑誌で、職場における困った上司についてよく取り上げられています。

その代表的なものに「パワハラ上司」があります。

このような傾向に対して、いかにして自分の怒りをコントロールして円滑な人間関係を構築するかを教えるアンガーマネジメントを学ぼうとする人も増えています。

巷でも多くの困った上司の操縦術に関する書籍が出版されていますが、エグゼクティブコーチングの第一人者であるマーシャルゴールドスミス氏は、「意思決定者に効果的に影響を与える」という論文で、上司や自分に影響を与える意志決定者との付き合い方のポイントについて解説しています。

本日は、この論文を紹介します。

 

目次

意思決定者に効果的に影響を与える

「非常に大多数の人は、下向きの焦点をあてがちだ。結果よりも努力で頭がいっぱいだ。彼らは、組織や上司が彼らに何を「借りている」のか、彼らが自分たちに何をすべきかを思い悩んでいる。何をよりも自分たちが「持つはずだった」権限を意識している。結果的に、彼らは自らを無力な存在にしている」—ピーター・ドラッカー

ピーター・ドラッカーは近代組織の中で知識労働者が与える影響を詳細に述べている。

知識労働者とは、彼らの管理職以上に自分たちが何をすべきかをよく知る人と定義される。多くの知識労働者は、長期間の教育と自分のポジションに関連したトレーニングの経験があるが、彼らはどうやって効果的に意思決定者に影響を与えるかというトレーニングはほとんど受けていない。

ピーター・ドラッカーは「行動や態度に適用できない素晴らしい知恵は、意味のない情報である」と言っている。

 

これから述べる11のガイドラインは、あなたがより良く意思決定者に影響を与えることを目的としている。

あるケースでは、意思決定者は直属もしくは上位の管理職かもしれない。

また他のケースでは、仕事仲間もしくは他部門の同僚かもしれない。

私はこの提言があなたの考えを意味のある行動に結びつけることに役立ってほしいと願う。

 

私たちの人生に影響を与える全ての意思決定は、その意思決定をする権限を持つ人によって行われる。決して「正しい」人や「賢い」人、「最善の」人ではない。この事実と折り合いをつける。

このガイドラインは簡単で明白のように思えるが、私はこの点を深く理解している人(知性のある人でも)がいかに少ないについて驚いている。

あなたの子どもが学校から帰って来て、「公平じゃない! 僕は、本当は「A」なのに、先生は「C」しかくれない!」と不満を言った。

私たちは両親として、次のように言うべきだ。

「現実世界へようこそ、息子よ! 人生では意思決定者が決め、君はいつも意思決定者ではない事実を受け入れるべきだ」と。

 

決定権のある人が常に意思決定をする事実をいったん受け入れれば、そして「公平じゃない」という泣き言を乗り越えれば、私たちは他人に影響を与え、ポジティブな違いを生むことにおいて効果的になれる。私たちはまたより幸福になれる!

 

意思決定者にアイデアを提示した時、あなたにそれを売る責任があり、彼らにそれを買う責任はないことを理解する。

多くの点で、最終意思決定者に影響を与えることは、製品やサービスを外部の顧客に販売するのと同様である。

彼らは買う必要はない。しかし、あなたは売る必要がある!

いかなる優秀なセールスマンは、結果の実現に責任がある。

顧客が製品を買わないことを非難するようなセールスマンには誰も感銘を受けない。

 

責任を取ることの重要性は外販では当たり前のことかもしれないが、大企業に所属する驚くべき数の人が、経営者が自分のアイデアを採用しないのを「非難」するのに数えきれない時間を費やしている。

前ハーバード大学教授のクリス・アルジリス(Chris Argyris)は、「上向きのフィードバック」がいつしか「下向きの責任転嫁」に変わっていることを指摘した。

私たちは他人が状況を悪化させたり、自分たちが状況を好転できなかったりする時、「無力」になる。

もしアイデアをプレゼンする能力の開発により多くの時間が使え、アイデアを買わないことで他人を非難しなくなれば、より多くのことを達成できるはずだ。

 

影響を与えるプロセスの主要な部分に、意思決定者の教育がある。

再び、ドラッカーを引用する。「知識のある人は、理解されることに責任を持つよう常に期待されてきた。素人が専門家を理解しようと努力できる、もしくは努力すべき、と想定するのは野蛮人の傲慢に過ぎない」

 

効果的な影響を与える人は、よき教師にならねばならない。

良い教師は知識を伝えることは、知識を保有することよりもより素晴らしい挑戦であることを理解している。

 

単に自分自身の目的達成ではなく、より大きな使命への貢献、そして意思決定者のニーズにフォーカスする。

効果的なセールスマンは顧客に「この製品を買うべきです。というのも、あなたが買わなければ、私は目的を達成できない!」とは決して言わない。

効果的なセールスマンは、自分自身のニーズではなく、買い手のニーズと関係づける。同じように、効果的に上向きの影響力を及ぼす人
は、彼らの部署やチームのニーズではなく、組織のより大きなニーズと関係づける。

意思決定者に影響を与える時、あなたの提案が全社的にどのような影響を与えるかに注目すべきである。

たいていの場合、チームのニーズと会社のニーズは直接結びついている。別のケースではそうではない。経営陣があなたのチームと全社の利益を自動的に関連づけていると考えてはいけない。

 

つまらない点にエネルギーと「心理的な資本」を浪費せず、「大きな戦い」に勝つことに努力する。

エグゼクティブの時間は本当に限られている。

「システムに挑戦する」前にアイデアの徹底的な分析を行いなさい。

結果に与えるインパクトが無視できるような問題に時間をかけない。

本当の違いを生み出す問題に注力しなさい。

 

小さな点は「失う」ことを厭わないことだ。

ビジネスに関係のないつまらない議論、例えばレストラン、スポーツ・チーム、自動車などの議論に勝つ必要があるかに特に敏感になりなさい。

人は私たちがビジネスの重要な点で正しいことよりも、つまらないことで「正しい」ことにイライラする。

あなたは変化を起こすことや重要な点で勝利することで報酬を得ているのだ。

スポーツ・チームの相対的なクオリティーに関する議論に勝利することで報酬を得ているのではない。

 

単にメリットを売るのではなく、アイデアの現実的な「費用便益」分析を提示する。

全ての組織は限られた資源、時間、エネルギーしかない。

あなたのアイデアを承認することは、他の誰かが素晴らしいと信じているアイデアの棄却を意味するかもしれない。

あなたのアイデアに関する現実的なコスト議論ができるよう準備しなさい。

あなたのアイデアが導入されるために、他の何かが犠牲にされなければならないという事実を知りなさい。

コストに関する現実的な議論の準備をすることで、あなたのアイデアが反対される前に「反対に備える」ことができる。

あなたは他の誰かが被るかもしれない犠牲を知り、あなたのプランからの利益がコストを上回ることを指摘できる。

 

倫理の侵害に対して決して黙っているのではなく、倫理や誠実さに関する問題に挑む。

エンロン、ワールドコム、その他の企業は、倫理の侵害が最も価値のある企業でさえ破壊することを劇的に示した。

最も良い企業も、企業の誠実さに関するたった一つの侵害でひどく傷ついてしまう。

できれば、あなたの会社のマネジメントから企業倫理の侵害を象徴する行為を決して依頼されてはならない。

もしそうなったら、その依頼を拒否し、すぐにその上の経営陣にあなたの心配事を伝える。

この行動は究極的な会社、顧客、仕事仲間、そしてあなた自身の利益と受け取られるべきだ。

 

挑んでいる時には、経営陣が意図的にあなたに何か間違ったことをさせようとしていると仮定しないことだ。

あるケースでは、一見すると不適切なリクエストも単に誤解やコミュニケーション不足の結果でなされたのかもしれない。

あなたのケースも、一方的な判断をするようなやり方ではなく、そのことが役立つようなやり方で示しなさい。

 

権力のある人たちは、あなたと同じ「人間」にすぎず、決して「このレベルの人には驚嘆する」などと言ってはならない。

意思決定者は有能だと考えるのは当然のことだ。

でも彼らを普通の人間以上の何かと考えるのは現実的でない。

人類の歴史において、ある人が高い地位、権力、お金を得た時に、その人が完全に「賢く」「論理的」になったと示したことがあっただろうか。

私たちは何度、「もしあのレベルだったら」そして「何が起きているか知るべき」「もっと論理的になるべき」「そんな間違いをしない」とか「そんな不適切な硬派決していない」と、考えたことがあるだろうか。

最高のリーダーであっても人間である。私たちは全員間違いを犯す。あなたの管理職が失敗した時、彼らを判断するのではなく、手助けすることに注力する。

 

意思決定者をお客様を取り扱うのと同じ礼儀正しさで接する。決して無礼になってはならない。

意思決定者に「へつらう」ことを避けるのは重要だが、反対の反応をとることを避けるのも重要だ。

驚くべき数の中間管理職の人が、会社とその経営陣を「中傷」したり、他の仕事仲間に対する破壊的な発言をしたりするのに時間を費やしている。

リーダーの360度評価をレビューする時、「会社や仕事仲間に対する破壊的な発言を避ける」という項目は、決まって仕事仲間の満足度では「最低点」になっている。

 

話し出す前に、次の四つの質問をするのが一般的には良い。

  • この発言は会社のためになるだろうか。
  • この発言はお客さまのためになるだろうか。
  • この発言は私が話をしている相手のために
    なるだろうか。
  • この発言は私が話題にしようとする人のた
    めになるだろうか。

もし答えが四つともノーであれば、話してはならない! 全くの正直さと機能不全の開示には大きな差がある。

前に議論したように、誠実さの問題に「挑む」ことは大切である。意思決定者を陰で中傷するのは不適切である。

 

組織の最終決定を支持する。直属の部下に「これは皆さんに話せと言われたことなので」とは言ってはならない。

組織の最終決定が道義に反せず、合法的で、倫理的な内容と仮定するなら、それを機能させるよう努力しなさい!

仕事仲間に常に「これは皆さんに話せと言われたことなので」という管理職は、リーダーではなく「メッセンジャー」と見られる。

さらに悪いことには、「馬鹿な奴らが私に話せと言っているので」と言ってはならない。

 

最終決定に対してリーダーがコミットメントを示さないことで、私たちは効果的な実行の機会を駄目にしてしまう。

難しい意思決定を伝えるときの簡単なガイドラインは、「もし私の最終決定が伝えられて、従業員が私に合意しない場合、私は従業員と話をする誰かがどのくらい必要だろうか」と尋ねるとこだ。

その役割が逆だった場合を想定して、あなたが取り扱ってもらいたい同じ方法で意思決定者に接しなさい。

例えば、もしあなたが直属の部下の前で上司の陰口を言うなら、部下があなたに従わない時あなたは彼らに何と言うのか。

 

ポジティブな変化を生む。単に「勝つこと」や「正しこと」をするのではなく。

私たちは、自分たちがどうやって物事をよくするのかより、他の人が間違ったことをしているのかに容易に注目してしまう。

ある学術機関では、そのゴールは多種多様なアイデアを共有することで、採算性は度外視されている。

何時間にも渡る辛辣な議論も完全に容認されている。

企業では、採算を無視したアイデアの共有は無益以上に悪い。それは株主からの資金の無駄遣いであり、顧客へのサービスを無視したものである。

 

私がハーバード・ビジネス・レビュー誌からインタビューを受けた時、「あなたがあってきたエグゼクティブに共通する『改善領域』は何ですか」と質問された。

私はこう答えた。「勝ちすぎようとすることだ」と。

 

変化を生むことに注力しなさい。

他の人があなたのアイデアで「正しくなり」、「勝つ」ようになれば、あなたのアイデアはより上手く実行されるようになる。

 

未来にフォーカスする。過去は水に流す。

避けるべき最も重要な行動は、過去について「泣き言を言う」ことだ。

あなたはいままでひっきりなしに悪いことばかりだと泣き言をいっている人を管理したことがあるだろうか。

人が絶え間なく泣き言を言う時、彼らは将来にインパクトを与えるかもしれないチャンスを駄目にしている。

管理職は彼らを厄介な存在と見てしまう。直属の部下は彼らを無能とみる。誰も勝利しない。

 

成功した人たちは、彼らの将来のゴール達成に役立つアイデアをもらうのが好きだ。

彼らは過去に起きた失敗のために「間違いが証明されている」ことを嫌う。

未来に焦点をあてることで、あなたは昨日成し遂げられなかったこことではなく、明日成し遂げることに集中できる。

この未来志向はあなたが意思決定者に効果的に影響を与える可能性を劇的に高めるだろう。

 

加えて、あなたが組織の全ての階層の人たちと良好で長期的な関係を構築するのに役立つ。

結論として、あなたが「自分の技能を完璧にする」ことに費やした年数を考えなさい。

 

あなたが蓄積してきた全ての知識を考えなさい。

どうすればあなたの知識が組織に潜在的に役に立てるかを考えなさい。

この知識を得るのにあなたはどのくらいの労力を投入してきたか。意思決定者に対するこの知識を示すのにどのくらいの学習時間を投入してきたか。

 

それはあなたが本当の変化を起こさせるためだ。

私の願いは、意思決定者に影響を与える方法を学ぶことに僅かの投資をすることで、あなたがあなたの組織の将来に大きくポジティブ
な変化を生み出すことだ。

 

最後に

本日の記事はいかがでしたか。

この記事で書かれた11のコツのひとつでも使って、あなたとの上司との関係を欠けてみてはいかがですか。

yujiro akimoto
  • yujiro akimoto
  • 【経歴】
    兵庫県神戸市出身。

    大学卒業後は、日系の精密機器メーカーに入社。約9年間に渡り人事、海外販売 (東南アジア地域)、営業支援などの業務を経験。

    その後、コンサルティング業界に転職。
    戦略コンサルタントとして、通信業・製造業・専門サービス業などのクライアントに対する戦略立案や戦略の実行支援などに携わる。

    コールセンター会社の経営企画と人事の担当役員として事業会社の経営に携わった後に、株式会社秋元アソシエイツを設立し、組織の生産性向上などのコンサルティングサービスを提供する。

    【資格】

    Marshall Goldsmith Stakeholder Centered Coaching (Certificated Coach)
    全米NLP協会 プラクティショナー
    TOEICスコア: 915

1件のコメント

  • おはようございます。
    ケンタロウと申します。
    株・為替・ビジネスグループにて、
    こちらのブログをみつけました。
    大変興味深かったので、読者になりました。
    そこで、もしよろしかったら、私のブログものぞきにきてください。
    読者になっていただければ、大変光栄です。
    よろしくお願いいたします。
    ケンタロウ

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