【書評】「成果を上げるムダ取り事例集」
- 書籍名:「成果を上げるムダ取り事例集」
- 著者名:日経情報ストラテジー
この本はKindleの電子書籍です。
書籍の中で、資材の調達コストや生産物流コスト、ホワイトカラーの事務コストなどのムダ取りに成功した、40社以上の事例を紹介しています。
職場のムダ取りの専門家によると、どんな工場・ホワイトカラー職場でも二割は生産性が向上でき、特にホワイトカラーは業務量の半分に減らせると断言しています。
この本では、業務改善の切り口として五つの視点をあげています。
- 統合する
- 置き換える
- 簡素化・標準化する
- 無くす・やめる
- 続ける仕組みを作る
目次
統合する
購買の一本化や他社との共同配送、シェアードサービスなどの分散していた業務を一カ所に集約することでコストの削減が可能です。
置き換える
これは、ビジネスの現状に合わせて、業務を処理する部門に移管することです。
正社員が従来取り組んでいた業務をパート社員らに任せたり、外注化したりという策はコスト削減の有効な一手になります。近年では法人営業をアウトソーシングする企業も増えいます。
書籍の中では、従来生産部門が担当していた生産計画策定を物流部門の管轄に置き換えた事例が紹介されています。
この移管により、店舗との連携を強め、店舗での販売データに応じて補充生産を行う体制にしたことで、工場在庫を三分の二に削減しました。
他の例では、検品作業の集中化があります。
ある企業では、工場での野菜などの食材の検品作業を、生産部門から物流部門に移管し、統一した検品基準に基づいた検質、検数を徹底して、サプライヤーや産地に対して改善要請
を行いました。
置き換えにおいては、検討の対象となっている業務が本当に正社員にしか出来ないような専門性の高いものなのかを見極める必要があります。
簡素化・標準化する
これは、一連の作業の中でムダを取り除いたり、誰がやっても同じ品質の結果になるようにマニュアル化することを指します。
その際に、何が「ムダ」なのかの定義を明確にし、社内で共有する必要があります。
物づくりの現場では、「七つのムダ」という考え方があります。作りすぎ、手持ち、運搬、加工そのもの、在庫、動作、不良品、手直しのムダのことです。
この本では、「ムダ=現状の仕事−付加価値的作業」と表現しています。
付加価値というのは「お客様がお金を出してくれる仕事かどうか」で判断します。
あくまでも判断の基準は、お客様に評価されるかどうかという点です。
ある会社では、レジ対応などの接客業務のムダを省き、標準化しています。
そのためには、店員の作業を200項目ほど洗い出し、手順をマニュアルで定めました。
レジの立上げに荷受け、荷出し、商品補充、POP(店頭販促)の貼り付けなど、ひとつひとつの作業に要する標準時間を15分単位で設定しました。
それらの作業時間をもとに、店長は一日の作業を各店員に30分単位で割り当てます。
そのような細かな作業・時間管理を行うことで、店員を有効配置することができ、人件費の効率化を図ることができます。
無くす・やめる
価値のないことはもうやらないことです。
VEという手法があります。VEというのは、Value Engineeringの略で、商品やサービスの「価値(V)」を、その「機能」と「コスト」との関係で把握するというもので、「V=FC(価値=機能コスト)」という式で表すことができます。
顧客から見た商品やサービスの価値を高めるために、提供したい機能を洗い出し、各機能を実現するコストを削減したり、高機能化、高性能化したり出来ないかをチームで検討します。
具体的には、機能系統図を使って主要機能を細かく分類、ニーズの低い機能をなくしたり、各機能を構成する部品などのコストを削ったりします。
ある企業では、社内で開催される会議の数は多いのですが、数だけ多くて、いつまでも何も決まらないことを問題視し、会議の見直しを行いました。
会議のうち、PDCAを回す会議だけを残し、他の会議は不要なものとして廃止しました。
続ける仕組みを作る
業務改善というのは一度やってしまえば、それで終わりというわけではありません。継続的に改善活動を行って、企業体質を強化しなければなりません。
そのためには、会社として、ひとりひとりの社員が常に「もっと良くすることはできないか」と考えさせる仕組みを準備する必要があります。
書籍の中では、ある企業の取り組みとして、
- イントラネット上に個人ポータルサイトを開設し、活動の進捗を管理する
- 優秀な事例に報奨金を支払う
- 小集団活動と連携させる
などが紹介されています。
業務改善を進める上での視点や事例が紹介されおり、参考になる一冊です。