【書評】「やさしくあがりを治す本」
- 本書籍名:やさしくあがりを治す本
- 著者名:鳥谷 朝代
プロジェクトの役員向けのプレゼンテーションだったり、就職面接だったり、ここ一番という場面を控えていると、人はどうしても緊張してしまいますよね。
程よい緊張感というのは、パフォーマンスを上げる効果があるという研究結果もありますが、緊張ではなく「あがってしまう」と逆に自分が持てる力を発揮できないことがあります。
この本は、ひとはなぜ「あがる」のか、どうしてたら「あがる」のを抑えられるのかといったことを丁寧に説明しています。
ちなみに、著者の鳥谷氏は、2014年に「一般社団法人あがり症克服協会」という元あがり症によるあがり症のための協会を立上げ、理事長に就任しています。そんな協会があるんですね。
目次
人はなぜあがるのか
著者によると、あがり症は癖のようなもので、貧乏ゆすりと同じように矯正は可能だそうです。
人が上がる仕組みですが、人は不安や恐怖を感じると、神経伝達物質「ノルアドレナリン」が多量に分泌され、自律神経のうち交感神経を刺激するそうです。
副交感神経が刺激されると、心拍数や血圧、体温などが急上昇します。
まさに心臓がドキドキしたり、顔がほてったりという症状です。
ノルアドレナリンは、「セロトニン」という物質によって、その分泌が抑えられます。
逆に体内にセロトニンが不足すると、感情をコントロールしにくくなるため、ちょっとしたことで不安になってしまいます。
このセロトニンをいかに増やすかが重要です。
書籍の中には、セロトニンの不足度チェックがあり、自分のセロトニンの状況が簡易に把握できます。
質問のうち、五つ以上あてはまるものがあると、セロトニン不足の疑いありです。
- 緊張しやすい
- 寝つきが悪い。夜中によく目が覚める
- 頭痛がある
- 疲れやすい
- 顔のたるみが気になる
- 猫背である
- イライラすることが多い
- たくさん食べても満足できない
- 太り気味
- 定期的に運動を行っていない
- 何をするにも億劫だ
- 朝食は食べないことのほうが多い
あがりやすい人の傾向として、完璧主義で真面目なところがあるようです。
そのため、人前で恥をかきたくない、失敗したくないと強く思いってしまいます。
しかし、誰でも生まれつきあがり症ではなく、あがりやすくなったのには何らかの原因があります。それは
- 過去のトラウマ、マイナス体験(例:高所恐怖症)
- 場馴れしていない
- プレッシャーを感じたとき
- 準備・練習不足、
などです。
また、 あがり症の人には「人付き合いが苦手」という人が多いようです。
人付き合いが苦手なだけでなく、「自分の存在は、他人にとって迷惑で不愉快である」とネガティブに考えて、相手の言葉や態度を悪いほう悪いほうへに解釈します。
これは、相手が悪いのではなく、自分がそのように感じているのですが、そのことに気づいていません。
あがらないようにするには
自分の感じ方次第だと言われても、それができないから多くの人は悩んでいるのだと思います。
それでは、どのようにすればあがらないようになるのでしょうか。
本書では、あがらない方法としていくつかのアイデアが提示されています。
- 筋肉弛緩法:一度5-10秒全身に思いきり力を入れ、その後一気に脱力することを繰り返すとリラックスする
- 腹式呼吸:セロトニンを増やす効果がある
- ストレッチ:姿勢を正す筋肉と、あがりをコントロールする筋肉(腹横筋)はほぼ同じ。姿勢が悪いだけではなく、あがり症の人は体が硬い。
腹式呼吸以外にも、セロトニンの増加に効果的な活動として、
- ランニングやダンスなどのリズム運動(セロトニンだけでなく、免疫力や自己治癒力を高める効果のあるエンドルフィンも増やす)
- 咀嚼運動
- 本読み
- 赤みの魚や肉を食べる(特にカツオやマグロが効果的)
- ナッツ類を食べる
などがあります。
それ以外にも、
- 服装、姿勢、表情などの見た目をよくする
- プレゼンなどの場合は、会場には早めに入る
- プレゼン中は、視線は会場をまんべんなく見るのが理想だが、それが難しい場合には好意的に聞いてくれる人を中心にみる
- 面接の場合は、決してとりつくろわない(落とされる原因はあがること以外にある)
などにも意識するといいそうです。
最後に
本日の記事はいかがでしたか。
この本を読んでみて、自分が上がるときは準備が充分でなかったことが多かったです。
準備をしておかないことで、「この後どうなるのか、どんなことが聞かれるか」の先読みができず、漠然と「答えられなかったらどうしようと」不安になっていました。
改めて、準備を徹底することの大切さを教えてもらった一冊でした。