【書評】「戦略を、実行できる組織、実行できない組織。」
- 書籍名:「戦略を、実行できる組織、実行できない組織。」
- 著者名:クリス・マチェズニー、ショーン・コヴィー、ジム・ヒューリング
全世界で3,000万部というビジネス書の歴史No.1を記録する書籍が、スティーブン・R・コヴィーによる「七つの習慣」です。
このコヴィー氏は、リーダーシップやコミュニケーション能力などの向上のために、専門的サービスおよび商品を提供するフランクリン・コヴィー社を設立しました。
「戦略を、実行できる組織、実行できない組織。」は、このフランクリン・コヴィー社に所属するクリス・マチェズニー、ショーン・コヴィー、ジム・ヒューリングの三名によって書かれた書籍です。
この書籍では、組織が戦略を策定しても、それがなぜ実行されないかについて解説しています。
主な理由は、
- 目標が曖昧である
- 戦略を実行する際のコミットメントが欠如している
- アカウンタビリティ(報告責任)の問題
- 目標が具体的な活動に落とし込まれていない
- 日常業務への忙殺されてしまう
などです。
そのような課題を克服するためには、著者は戦略を実行する際に四つの規律が必要であると言っています。
- 第一の規律:最重要目標にフォーカスする
- 第二の規律:先行指標に基づいて行動する(レバレッジ)
- 第三の規律:行動を促すスコアボードをつける(エンゲージメント)
- 第四の規律:アカウンタビリティのリズムを生み出す
目次
第一の規律:最重要目標にフォーカスする
人は一度に複数のことを同時に処理できると思っていますが、その脳の構造上、一定の時間に集中できるのは一つのことだけだと言われています。
米国神経障害・脳卒中研究雨女のジョーダン・グラフマンは、「マルチタスクの能力を高めると、深く創造的に考える能力が損なわれる…多くの作業を抱えるほど熟慮できなくなる。問題の答えを考え出す能力が低下するのである」と指摘しています。
著者も「一度に四つ以上の目標にフォーカスできるチームは存在しない」と言っています。
しかし、リーダーとしては、良いアイデアを無視できず、結果的に目標を増やしてしまう傾向があります。
アップル社のティム・クックはこう言います。
「私の知る限り、当社は最も焦点を絞った企業です。毎日良いアイデアを不採用にしています。製品の数を絞り、それに全精力を注ぐために、ずば抜けたアイデアさえ採用しないこともあります。アップル社の製品の全ては、皆さんの前の小さなテーブルに並べられるでしょう。それでも当社の昨年の売上高は400億米ドルにものぼるのです」
限られた時間と要員で何をすべきか、その優先順位づけのためには、
- 他の全ての業務が現在の水準を維持するとして、変化することで最大のインパクトを与えられる一つの分野は何か
- チームのパフォーマンスのどの部分を改善すれば、組織全体の最重要課題の達成に最も貢献できるか
- チームのどの強みにテコ入れすれば、組織全体の最重要課題に貢献できるか
- 組織全体の最重要課題の達成に最も貢献するためにチームのパフォーマンスが低いどの分野を改善すれば良いか
といった視点を持つ必要があります。
この際に決定した重要事項ですが、上位の重要課題と下位の重要課題が一致していなければなりません。
また、全ての最重要課題に期限を決めておきます。
この戦略を実行するためには、従業員が自主的に参加する意識(コミットメント)が必要で、この点において管理職は従業員に命令しないことが肝要です。
第二の規律:先行指標に基づいて行動する(レバレッジ)
先行指標というのは、目標達成(結果)が予測できるもので、このためチームがどうやればいいか、その方法がわかっているもの、つまりメンバーが影響を及ぼせる指標を指します。
それに対して、遅行指標とは、売上高、利益、マーケットシェア、顧客満足度などのように、結果が出てからではそれを改善しようとしても手が打てないものを指します。
品質管理の権威であるW・エドワーズ・デミングは、財務データ(遅行指標)を眺めて会社を経営するのは「バックミラーを見て車を運転するようなものだ」と、遅行指標に
よる管理の欠点を指摘しています。
しかし、先行指標のデータはほとんどは遅行指標のデータよりも取得しにくい点がありますが、代償を払ってでも先行指標を追跡しなければなりません。
自分たちがコントロール可能な指標を目標にすることで、目標達成の途中でも対応が可能になります。
第三の規律:行動を促すスコアボードをつける(エンゲージメント)
スコアボードの特徴としては、
- シンプルかすぐに見られるか
- 先行指標と遅行指標が示されているか
- 勝っているか一目でわかるか(進捗状況)
という点を備えていなければなりません。
第四の規律:アカウンタビリティのリズムを生み出す
「アカウンタビリティのリズムを生み出す」というのは、具体的に言うと、組織内で定期的かつ頻度の高いミーティングを実施することです。
例えば、毎週同じ曜日に20-30分のミーティングを開催するという感じです。
そのミーティングでは、参加者の各自が「スコアボードに最大のインパクトを与えるために、竜巻の外で来週できる一つか二つの重要なことは何か」を明確にします。
具体的には
- 前週の約束を果たしたか
- スコアボードの先行指標と遅行指標はどう動いたか(うまくいったこととうまくいかなかったことの確認。学び)
- 来週は何をするか(障害を取り除き、新たにコミットメントをする)
という点を発表します。
ミーティングの主催者は、メンバーの約束の中身が適切であるかどうかに責任を持ちますが、重要なのはメンバー自身が約束をすることです。
パトリック・レンシオーニ「なぜCEOの転職先が小さなレストランだったのか」の中で、仕事に対する意欲が失せる次のような兆候を示しています。
- 匿名性:自分がやっていることを組織のリーダーがわかってくれていない。誰も気に留めていないと感じること
- 無関係:自分の仕事がどのように組織になるのか理解できていない
- 無評価:自分がしている貢献を自分で測定できない。評価できない。
このような点を克服するためにも定期的で頻度の高いミーティングの開催が筆余蘊胃なります。