眼前の現象ではなく、本質に眼を向けられるか?
コンサルティングでは、様々な手法を使って分析を進めます。
今日はその中の一つを紹介します。
目次
DILO
この手法は、業務改革やBPR(ビジネスプロセスリエンジニアリング)などで使われるもので、コンサルタントがお客様の業務を一日つきっきりで観察します。
このため、この手法をDILO(Day In Life Of)と呼ばれます。
日本語的には、「○○さんの一日」といった感じでしょうか。
DILOの実施方法
具体的な進め方ですが、まずクライアントと協議して、業務改革の対象となる部門と業務を特定します。
例えば「営業管理部門の受注処理」とか「経理部門の未収金処理」などです。
その後で、その業務を担当している社員を選定してもらい、調査の日取りを決めます。
調査対象者は、できればベテラン社員の方が望ましいです。
調査当日ですが、コンサルタントは始業開始から終了まで、調査対象者の横に座って、どのような作業をどのくらいの時間を掛けて実施するのかを書き留めていきます。
ただ、記録するだけでなく、疑問に思ったことは随時質問し、その回答内容も遺しておきます。
ちなみに、調査の前に対象者と面談し、具体的にどのような作業をしているのかを聞き取りを済ませておけば、当日の記録作業がスムーズに行くので、やっておいた方がいいでしょう。
また、調査はプロジェクトの開始間もない頃に実施するのが良いです。理由はこの後に説明します。
この調査の狙い
この調査は、限られたプロジェクト期間で丸一日を使うので、クライアントの社員だけでなく、調査を実施するコンサルタント自身にも負担がかかるものです。
しかしながら、それだけの工数を投入するだけの情報が得られます。
まず、理解すべき点は、DILOは対象者が一日のうちにどのような作業をどのくらいの時間をかけているかを調査しますが、自身の業務生産性を評価することが目的ではありません。
というのは、調査をしたその日は無作為に選んでいるので、その日にどのような作業があるかは様々です。
あくまでも「とある社員のある一日」でしかないと理解して下さい。
この点をあらかじめ、クライアントに伝えておかないと誤解を招いてしまいます。
また、人というのは見られていると普段よりも効率よく仕事をする傾向があります。いい意味でも「バイアス」がかかったデータになるので、そのまま受け取らないようにすべきです。
クライアントへの報告書には、DILO調査の結果として、一日の時間配分を円グラフにして「見える化」をしますが、上記の点を踏まえた上で報告する必要があります。
この調査の真の狙いは、この後本格的な調査・分析をするにあたって、どこを集中的に調査すべきか「あたりをつける」ことにあります。
このように「仮説思考」にもとづいた調査にすることで、調査にメリハリがつき、効率的に進められます。
この点から、プロジェクトの早い段階で実施することがポイントになります。
調査中には、対象者にいろいろと質問することがあります。
その際には「何をしているのか」という作業そのものを理解する質問も大切ですが、むしろ「なぜその作業をしているのか」といった背景にある情報をとる質問を多くすべきです。
背景情報ができるだけ沢山得られれば、それだけ深みのある仮説が作り出せます。
例えば、ある作業について「なぜ、そういう手順で作業をするようになったのですか」と質問したときに、「それはよく判らないけど、前の担当者の人から教えてもらったので、こうやっています」という答えが返ってきたとします。
その答えから、
- 頻繁な業務手順の見直しは行われていない
- 作業の効率性を上げ続ける活動が組織内で根付いていない(文化的な側面)
- 下からの改善の声が通らない雰囲気があるなど
の可能性が考えられます。
また、同じ質問に対して、「いや、自分も常々おかしいと思っていたのですが、営業部からの強い要望でこうなっているのです」という回答だと
- 部門間での情報の取り交わすプロセスに改善の芽があるのではないか
- 外部の(社内の他の部署やお客様)がそのような要望を出す背景を変えられるのでは
などを後の詳細調査で確認することになります。
最後に
いかがでしたか。
意外に地味な調査なのですが、プロジェクトを効率的に進めるためには有効な手段です。