ほめ上手になれば、マネジメント力がアップする!
目次
ほめちぎる教習所の話
三重県に南部自動車学校という教習所があります。
あなたも自動車免許を持っているなら、記憶にあるかもしれません。
教習所というのはちょっとでも操作ミスや確認忘れがあると指導教官から厳しく怒られるというイメージがあるかと思います。
この南部自動車学校も世の中のイメージと同じ教習所でした。
しかし、少子高齢化や若者の車離れから免許取得者の人数自体が減少傾向にどう対応するかを考え、指導方法を抜本的に見直すことにしました。
それは、徹底的に「ほめる」ことでした。
その結果、次のような効果が表れました。
- 免許合格率のアップ
- 卒業生の事故率の半減
- 指導員のモチベーションの向上
ほめる効果
なぜ、ほめるだけでこんなにも劇的な変化を得ることができたのでしょうか。
これは人が持つ本質的な欲求に関係しています。
人というのは、自分自身が価値がある存在だと思いたいし、その自分の存在を他人から確認してもらいたい(認められたい)という欲求があります。
これを「自己重要感」と言います。
また、認められること、つまり「承認する」ことには、次の二つのタイプ分類されます。
- 存在承認
- 行為承認
存在承認
これは、相手の存在そのものに対して承認することで、相手にここにいてもいいと思わせることで、自分の存在に自信を持たせる効果があります。
存在承認は、「マズローの欲求5段階説」でいう帰属欲求にあたります。
マズローの欲求5段階説というのは、アメリカの心理学者のアブラハム・マズローが唱えた說です。
この說によれば、人間には様々な欲求があるが、それはピラミッドのように階層化されており、より低階層の欲求が満たされると、その次の階層の欲求を欲するとされています。
この階層には、
- 生理的欲求
- 安全欲求
- 社会的欲求(帰属欲求)
- 尊厳欲求
- 自己実現欲求
から構成されており、人間としての基本的・本能的な欲求から始まり、階層を上がるにつれ、より内的な欲求になっていきます。
日常的なシーンで見られる存在承認には、
- あいさつをする
- 名前を呼ぶ
- 変化に気づく
- 声かけをする
- 目を合わせる
- 役割を与える
- 人を紹介知る
- 食事などに誘う
- 共感する
- 家族、誕生日、趣味などを覚えている
- 相談する
- その人の家族を気遣う
などです。
こういう言葉を掛けたり、態度を示したりすることで、相手の存在を承認しているメッセージになります。
行為承認
これは、相手の取り組みに対する過程やその結果に対して承認することです。
結果に対して承認することは、相手にも達成感を感じさせることができますが、常によい結果をさせるとは限りません。
その代わりにその過程を承認することで、その人のどのような点で成長したかを伝えることができます。
日常的なシーンで見られる行為承認は、
- 評価する
- 表彰する
- ねぎらう
- お礼を言う
- 約束の時間を守る
- 謝罪をする
- 成功談を聴く
- アドバイスをする
- 叱る(怒るとは違う)
- 成果について皆の前で話す
- メール、電話の返事をすぐにする
- フィードバックをする
などです。
承認のコツ
このように相手の存在や行為について、自分はきちんと見ている・評価しているというメッセージを発することで、相手のやる気やモチベーションを引き出すことができます。
挨拶をするとか名前を呼ぶなどは、意識していればできることですが、さりげなくかつ効果的に承認をするために、気をつけておくべきポイントがあります。
それは、誰を主眼にメッセージを伝えるかということです。
Youメッセージ
相手をほめるとき、「あなたは素晴らしい」とか「あなたは良く頑張った」とだけ伝えることがあります。
このような伝え方は、「Youメッセージ」と言われます。
自分では相手のことを認めて心からほめたつもりでも、Youメッセージを受け取った相手は、自分が評価されていると解釈することがあります。
そのため、相手は「いえ、そんなことはありませんよ」と謙遜したり、否定したりして、ほめる効果が半減してしまうことがあります。
Iメッセージ、Weメッセージ
ただ、Youメッセージだけをつたえるのではなく、その後に「私は元気づけられた」というふうに、自分の感想を伝えてください。
これは、Youメッセージに対して、「Iメッセージ」と呼ばれるもので、話し手の感想や思いを伝えるので、相手としては否定しずらいものです。
また、メッセージを受け取った人が充実感を感じやすいという効果があります。
その進化形として、「私」ではなく「私たち」とグループ全体のことにすることで、Iメッセージ以上に受け手は充実感を感じることができます。
これを「Weメッセージ」と呼んでいます。
このように、承認をする場合は、事実+感情+賞賛という構成で相手に伝えることが肝心です。
- 事実:◯◯ができたね。
- 感情:助かるよ
- 賞賛:良くやってくれた
口頭で伝えるのがまだ恥ずかしいのなら、メールや手紙で伝えても同様の効果があります。
最後に
いかがでしたか。
日本人はほめるのがあまり上手くない民族だと言われています。
これまでほめたことがないのなら、早速トライしてみて下さい。
どんな小さなことでもいいのです。
相手にとってみれば、あなたがきちんと見ているというメッセージが伝わることが大切なのです。