フィードバックでなくフィードフォワードを!その10の理由
部下育成の手法のひとつに「フィードバック」があります。
フィードバックとは、部下が立てた目標に対する行動の結果について、どこが良かったのかとか、今後さらに良くするために何を改善しなければいけないかといった点を上司としてアドバイスすることです。
フィードバックは、 PDCA (Plan-Do-Check-Action)の「C (Check)」のステップで使われます。「D (Do)」の結果に対して適切な助言をすることで、PDCAのサイクルの品質が向上します。
エグゼクティブコーチングの第一人者であるマーシャルゴールドスミス氏は、Thinker50 Blogに発表した「フィードフォワードを試す10の確実な理由」という論文の中で、フィードバックよりも、「フィードフォワード」の方が効果があると言っています。
フィードフォワードとは、結果に対するアドバイスや提案ではなく、部下の行動がよりよい方向に変わるために役に立つ将来に向けた提案です。
本日は、この論文を紹介します。
なお、マーシャルゴールドスミス氏の論文の翻訳については、ゴールドスミス氏ご本人の承諾のもとで行っております。
目次
フィードフォワードを試す10の確実な理由
上質のコミュニケーションは、組織を一体化する接着剤の役割を果たす。
フィードフォワードを用いることと、他の人にもそれを用いることを勧めることにより、リーダーは組織内のコミュニケーションの質を劇的に改善できる。
リーダーはフィードバックを与えなければならないし、業績評価は実施されなければならない。
これは当たり前のことだ。
にもかかわらず、日常のやり取りにおいてフィードフォワードがフィードバックよりも好ましい時が多くある。
フィードフォワードはグループでの演習であり、その目的は、個々人に未来に向けた提案を与え、彼らに自らが選択した行動のポジティブな変化を実現するのを手助けする。
その効果と効率性とは別に、フィードフォワードは人生をより楽しいものにできる。
私のクラスの参加者がフィードフォワードは楽しく、苦痛や厄介なものや不快なものに反して役に立ちと考えている10の理由がある。
これらの記述は、なぜフィードフォワードが開発ツールとしてフィードバックよりも有益になり得るかについての素晴らしい説明をしている。
1. 私達は未来を変えることができる。
過去は変えられない。フィードフォワードは、人に失敗した過去ではなく、ポジティブな未来を心に描かせ、それに注力する手助けとなる。
人にどうやってより成功するかに関するアイデアを与えることで(失敗した過去を映像化させることに反して)、私たちは未来に成功を収めるチャンスを増やせる。
2. 人が「間違っている」と証明するよりも、人が「正しい」ことを学ぶよう手助けする方がより生産的である。
ネガティブなフィードバックはしばしば「私にあなたが間違っていることを証明させて下さい」という演習になってしまう。
フィードフォワードはそれに反して常にポジティブに捉えられる。なぜならば、それは問題ではなく、解決策に注目するからだ。
3. フィードフォワードは特に成功した人に適している。
成功した人たちは、彼らの目標達成を手助けするのを目指したアイデアを受け取るのを好む。
彼らは、ネガティブな判断に抵抗する傾向がある。
私は多くの成功したエグゼクティブがフィードフォワードに反応している(楽しんでさえいる)のを観察した。
私は同じ人たちがフィードバックにそのようなポジティブな反応をするかは確信が持てない。
4. フィードフォワードはその仕事を知っている誰からでも得られる。
その人との個人的な経験は必要としない。前に記述した演習に対するある非常に共通したポジティブな反応は、参加者は彼らが知らない人からそんなにも多くのことが学べることに驚いている!
5. 人はフィードフォワードをフィードバックほど個人的なものと捉えない。
理論では、建設的なフィードバックは「個人ではなく、パフォーマンスに焦点を当てる」ことになっている。
実際には、ほとんど全てのフィードバックは、個人的に捉えられる(どのようにそれが伝えられようとも)。
フィードフォワードは、未だ起こっていない何かを議論しているので、個人的な批判を含められない!
6. フィードバックは個人的な既成概念とネガティブな自己達成予言を強める。
フィードフォワードは、変化の可能性を強める。フィードバックは、失敗の感情を強める。
ネガティブなフィードバックは、「これがまさにあなたのやり方だ」というメッセージを強めるために用いられる。
フィードフォワードは、提案の受け手は将来にポジティブな変化を起こすという前提に基づいている。
7. それに直面する! 私たちのほとんどは、ネガティブなフィードバックを受けるのを嫌っており、それを与えるのも好きではない。
私は多くの企業からの360度フィードバックレポートの要約をレビューした。
「発展的なフィードバックを適切なタイミングで提供する」という項目と、「建設的な批判を奨励し容認する」という項目は、常にリーダーに対する仕事仲間からの満足度で最低の近い評価だ。
リーダーは、ネガティブなフィードバックを与えるのも受け取るのも下手なことは明白である。
これは近い将来に変化しそうにない。
8. フィードフォワードはフィードバックよりも早く効果的になりがちである。
成功した人たちにアイデアを与える卓越した手法は、「ここに将来に向けた四つのアイデアがあります。それらを与えられたものと前向きな気持ちで受け取り、そして、あなたにとって意味のないものは無視して下さい」と言うことだ。
このアプローチで、アイデアの質を判断したり、「そのアイデアが間違っていると証明したり」するのにほとんど時間を浪費しない。
9. フィードフォワードは、管理職、同僚、チームメンバーに適用できる有益なツールである。
正しかろうが、間違っていようが、フィードバックには判断が伴っている。
これは、管理職や同僚に適用される時に、非常にネガティブな(もしくはキャリアの制限になりさえする)意図されない結果に至る。
フィードフォワードは判断の優越さを意味していない。
そのように、権力や権威のポジションにない人から話を聞くのが簡単になる。
そして、最後に、フィードフォワードがフィードバックよりも良く機能する10番目の理由は…
10. 人はフィードバックよりもフィードフォワードにより注意を払って聞く傾向がある。
フィードフォワードの演習に参加したある人は、「私は今まで職場よりもこの演習でより効果的に聞けたと思います!」と発言した。
理由を聞かれた時、彼は「普通、人が話をする時、私が賢明であることを確実にする返答を組み立てるのに忙しく、他の人が言っていることを完全に聞いていないのです。私はただ
自分の反応を考えていたのです。フィードフォワードでは、私が許されたただ一つの反応は、『ありがとう』でした。私は賢明な答えを返すことに気を煩わす必要がないので、私のエネルギーを他の人を聞くことに注力できたのです!」
上質のコミュニケーションは、組織を一体化する接着剤の役割を果たす。
フィードフォワードを用いることと、他の人にもそれを用いることを勧めることにより、リーダーは組織内のコミュニケーションの質を劇的に改善できる。
それは正しいメッセージが伝えられ、それを受け取った人たちが内容をすぐに理解するのを確実にする。
その結果は非常にダイナミックで、組織をよりオープンにする。
つまり、従業員は過去の失敗を引きずるよりも、将来の明るい見通しに注力する。
あなた自身にも試してみて結果を見て欲しい。
最後に
本日の記事はいかがでしたか。
あなたも部下へのフィードバックの場に活かしてみてはいかがですか。